臨床画像研究の目的の一つは顕微鏡的解像度の画像を得ることである。すでに、3テスラのMRI装置を用いる事で病理学的解像度に近い画像をルーチンの臨床画像においてかなりの程度実現している。しかし真のMR顕微鏡(MR microscopy)を実現するためには更に高いS/N比が必要なのはあきらかである。統合脳機能研究センターは2003年の4月にヒト用7テスラMRI装置(7T)を日本で初めて導入した。装置の全景と、この装置を用いて世界に先駆け画像化し発表したアルツハイマー脳のMR顕微鏡画像を提示する。
ヒト用横型3テスラMRI装置(H3T)は国内最初の3Teslaヒト用MRI装置として1996年4月に導入された。T2Rコントラストによる高解像度画像をはじめ、fMRI,拡散解析、MRスペクトロスコピーイメージングなど多岐にわたる非侵襲的脳機能画像を早期より国内外に報告している。現在も多くの国内外の研究者との共同研究が引き続き行われている。
MRI拡散強調画像の拡散テンソル解析により得られる固有ベクトルの情報から神経路を描出するためのアルゴリズム(神経路画像 Tractography)出力の例。同時に施行されたfMRIにより同定される運動性言語野(青)と感覚性言語野(緑)をつなぐ神経路(橙)。ベイズ統計を用いたprobabilistic tractographyの一例。
縦型垂直ボアのヒト用MRI装置として世界で初めて1999年1月にGE社との共同研究開発により導入された。それまでのすべてのファンクショナルMRI装置では被験者は仰臥位のままであった。しかしながら、この装置では被験者は、二足起立はもちろん、昇降する椅子に着座し、車を運転しピアノをはじめとする楽器を演奏するなど従来の横型MRI装置では不可能であった種々の課題を遂行することができる。覚醒しているヒトは高度な認知作業をする際に仰臥位を取ることはまず無い。この縦型装置によって、二足起立の脳機能、重力の組織還流に及ぼす影響や脳虚血と重力の関係の解析が可能となった。