脳波は,神経細胞の電気活動を血流変化等の二次的効果を介さずに直接記録する利点を有し,ヒト脳機能計測のための数ある非侵襲的方法論の中で最も時間分解能に優れている。静音性・遮音性の高い防音室が整備され,被験者にとって快適な環境で,統制のとれた実験を行うことが可能である。
脳波には,多数の神経細胞による時空間的にダイナミックな電気的活動が,総和として反映される。 感覚や運動あるいは認知などに関連した神経活動により,その振幅はわずかに変動するが,多数の試行をtime-lockして加算平均することにより,この小さな電位変動を誘発電位あるいは事象関連電位として背景から分離することができる。この手法により,音楽や言語などの脳機能を解析している(文献1–4)。
図1
絶対音感保持者に単音を聞かせたところ,左半球の後側頭部に潜時150msecの陰性電位(AP negativity,矢印)が誘発された(文献2)。 絶対音感と言語の関連を示唆する新知見である。